炎はつなぐ めぐる「手仕事」の物語

大西暢夫著 毎日新聞社 2025

トチ餅というおもち、美味しいです。香ばしくて、なんともいえない、山の味がします。

トチの実は、硬くて、アクが強く、食べられるようになるのに、とても時間がかかります。母が子どものころ、トチの実の皮をへずって、風邪の時飲まされた、と聞いたことがあります。

お医者様がそんなに近くにいないから、おばあちゃんの時代は、民間療法の薬草を煎じて使うのが、ごくあたりまえでした。

家の眼の前にある草木からいただいたもので、うまく生かして使う、それが暮らしの中で息づく、あたりまえの時代でした。

いつからなのか、もうわからないけれど、いつの間にか、お金を払って何でも揃えるのが、あたりまえになりました。

それでは、もののありがたみがわかないな、

そんな言葉が、ふっと私の口から飛び出てきました。

本書を読んでいると、そんな気持ちにさせられます。

1本の和蝋燭。職人さんが作るために、その材料は循環していました。
丹念にそのことをたどる旅。

私も知りました。何代にもわたる職人さんのつきあいが、かろうじて、その技をつないでいるのだと。

祈るような気持ちで、作る工芸品の数々。そこでは、捨てるものは何もない。すべては次の技につながっていく。

なにか とても大切なことを教えていただいたような気持ちになりました。

今度 小鹿田焼 の器を手にとってみたくなりました。